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三元社出版物
投稿者: webmaster 投稿日時: 2019-1-6 10:52:37 (371 ヒット)

多言語社会研究会第78回東京例会を、下記の通り開催いたします。

みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

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第78回多言語社会研究会(東京例会)
日時:2019年1月26日(土)午後2時〜6時
場所:女子美術大学杉並キャンパス 6103教室
   http://www.joshibi.ac.jp/access/suginami
資料代:500円


<報告1>
タイトル:「章炳麟と『臺灣日日新報』―『民報期』の言語観への手がかりとして―」
報告者:土屋真一(明海大学大学院応用言語学研究科博士後期課程1年)
キーワード:章炳麟・『台湾日日新報』・民族主義・文字言語
概要:「駁中國用萬國新語説(中国、万国新語を用いる説を駁す)」を著した章炳麟は、清朝末期の文字改革運動におい同時期に発表された代表的な文字改革運動の論者たちとは異なる主張を展開した。
 この異なりとは他の代表的な文字改革運動は富国強兵をめざし教育の普及を目的とし、清朝政府の役人などを通じて文字改革運動を展開させたのに対し、章炳麟は教育の普及ではなく、民族の復興を目的とした漢字廃止論とエスペラント推進派への反駁を主題に反切を活用した記音字母の提案や草書や小篆という隷書を簡略した文字の普及をうったえたことにある。民族の復興とは漢民族が再興することを指し、つまりは章炳麟の民族主義にあたるふしがある。章炳麟がこのような考えを抱くにはいかなる経緯をたどってきたのであろうか。
 本研究では、その一過程として戊戌政変後台湾亡命していた時期に注目するとともに、当時章炳麟が就職していた『臺灣日日新報』で発表した「失機論」を中心に検証をおこなうこととする。そして台湾亡命時期が章炳麟にとって民族主義を形成する一過程であったことを明らかにしたいと考える。
 なお章炳麟と『臺灣日日新報』に関する先行研究については、先駆的研究として阿川修三氏はが『漢文学会会報第四十号』において「『台湾日日新報』所載章炳麟論文について」という表題のもと、章炳麟が戊戌政変で台湾に逃れたとき勤めていた新聞社が従来『台北日報』といわれていたが、実は『臺灣日日新報』であったことを発見し、新資料として紹介したうえで、過去の章炳麟研究に戊戌政変後の変法派との関係について新たな知見を与えている。また湯志鈞・近藤邦康の両氏は『中国近代の思想家』のなかで台湾亡命期の章炳麟についてとりあげ、阿川修三氏の発見の新資料として『臺灣日日新報』を紹介した。また湯志鈞・近藤邦康の両氏は『臺灣日日新報』の漢文欄に掲載された章炳麟の論説について分析をおこない、章炳麟の政治観とくに清朝政府や西太后に対する批判に関して論述している。
 以上の先行研究から当時の台湾が日本統治下であったゆえ、『臺灣日日新報』において章炳麟の清朝政府への直接的批判の具現化したことがわかる。


<報告2>
タイトル:社会言語学の課題としての医療通訳研究
報告者:糸魚川美樹(愛知県立大学外国語学部)
概要: 厚生労働省による「医療通訳カリキュラム基準」および医療通訳のテキスト(多文化共生きょうと2014年作成、2017年改定)の発表、外国人患者受け入れ医療機関認証制度(医療通訳拠点病院)の開始(2015年)、「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」の設置(2018年)など、医療通訳をめぐる国の動きが近年目立つ。自治体においてもNPOや国際交流協会などによって医療通訳者養成・派遣事業を立ち上げるところが増え、これらの事業や医療通訳者をつなぐ全国医療通訳者協会も2016年12月に設立された。2019年度には医療通訳認証(学会認証)が開始される予定である。
 医療通訳への関心は高まっており、関連シンポジウムが毎年どこかで開催され、医療系学会の大会でも分科会が企画されている。医療系専門誌にも医療通訳に関する特集が組まれている。近年の医療通訳をめぐる動き・議論・研究を紹介しながら、社会言語学が医療通訳とどう関われるのかを考える。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2018-11-17 0:36:00 (1673 ヒット)

多言語社会研究会・第10回研究大会を以下の要領で開催します。

【日 程】2018年12月1日(土)・2日(日)
【場 所】東京大学 東洋文化研究所
【参加費】1000円(どなたでも参加できます・事前申し込み不要)
【主 催】多言語社会研究会
【共 催】東京大学東洋文化研究所班研究「アジアにおける多言語状況と言語政策史の比較研究」

【大会テーマ】オリンピック 多言語とナショナリズム

【趣旨】
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会を前にして、多言語化についての議論を目にする機会が増えてきた。それら議論は、公共空間での多言語表記、公共サービスやビジネスにおける多言語対応などを中心としており、背景には、オリンピック大会に向けて増えるであろう外国人観光客に対応しよう、という発想がある。「対応しよう」と考える理由は立場(行政か民間か)によって多少は異なるようだが、姿勢は共通して積極的である。これら議論で目立つ内容を標語的に表現すると「多言語によるおもてなし、すなわち言葉のバリアフリーを通じて観光立国と多文化共生社会を推進しよう!」といったところであろうか。一連の議論について特筆すべきは、オリンピックや多言語(状況)が本来的に内包している政治性に対する徹底した無関心である。本大会1日目は、こうした議論とは逆に、オリンピックや多言語(状況)についての政治性を正面からあらためて問う場としてみたい。


【プログラム】
12月1日(土)
13:00 開会・趣旨説明
13:20 基調講演
 小澤考人(東海大学)「オリンピックとナショナリズム再考:多言語対応の向こう側」

14:20 報告1
 藤井久美子(宮崎大学)「オリンピック開催と多言語対応―東京と北京の場合―」

14:50 報告2
 塚原信行(京都大学)「バルセロナオリンピックの言語的レガシー:マイノリティ言語とオリンピック」

15:20 休憩

15:45 パネルディスカッション
 「オリンピック 多言語とナショナリズム」
  司 会:石部尚登(日本大学)
  パネリスト:小澤考人・塚原信行・藤井久美子

18:30 1日目終了

12月2日(日)
 ラウンドテーブル「多言語状況研究の20年を振り返る」
 日本において、社会的な言語問題を取り上げる研究が増加し始めてから20年ほどが経過した。この間、多言語状況に関する研究は広がりを見せたが、同時に細分化したために全体像がつかみにくくなっているとも言える。このラウンドテーブルでは、多言語状況を研究対象の1つとして含む学会・研究会の代表者が集まり、この間の関連研究の広がりと深化について総括を試み、また、今後の研究の方向性について議論する。

09:30 原聖「多言語社会研究会創設の経緯」

10:00 ラウンドテーブル

 司会:佐野直子(名古屋市立大学)
 参加者:
  大河原眞美(法と言語学会)
  かどやひでのり(「社会言語学」刊行会)
  定松 文(多言語社会研究会)
  庄司博史(多言語化現象研究会)
  平賀正子(社会言語科学会)
  村岡英裕(言語管理研究会)
  山川和彦(日本言語政策学会)

12:30 閉会


投稿者: webmaster 投稿日時: 2018-8-16 16:21:50 (629 ヒット)

多言語社会研究会第77回東京例会を、下記の通り開催いたします。

みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

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第77回多言語社会研究会(東京例会)
日時:2018年10月27日(土)午後2時〜6時
場所:東京大学東洋文化研究所 3階第1会議室304号室
   http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
資料代:500円

<報告1>
タイトル:塀の中の多言語世界―職業としての司法通訳を問う
報告者:高畑 幸(静岡県立大学国際関係学部)
概要:訪日外国人や定住外国人が増加するにつれ、被告人や証人など、外国人の訴訟関係者が法廷に立つ機会が増えている。国際人権規約および刑事訴訟法により、日本語を解さない被告人や証人には国費で通訳人が雇われる。法廷通訳人は法で定められた存在であり、通訳人不在では開廷できない。しかし、法廷通訳の担い手は年々減少している。それはなぜか。警察、検察、法廷などで働く司法通訳者の仕事を概観しつつ、訪日および定住外国人を言語の側面からケアする人材の育成と維持の課題を考えたい。


<報告2>
タイトル:言語権と法学的課題
報告者:杉本篤史(東京国際大学国際関係学部)
キーワード:言語権・言語政策・国際人権法・日本国憲法
概要:日本ではこれまで言語に関する政策や法令が全くなかったわけではないが、そこには統一的な言語観はなかった。例えば、刑事訴訟法175条は「国語に通じない者…には、通訳人に通訳をさせなければならない。」とする一方、176条では「耳の聞えない者…には、通訳人に通訳をさせることができる。」としている。ここでは国語とは何かを定義していないばかりか、非日本語音声言語話者に対しては通訳を必須とする一方、聴覚障害者の場合には通訳をさせることができるとして、後者の通訳を受ける権利が十分には保障されていない。なお民事訴訟法154条では「口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき、又は耳が聞こえない者若しくは口がきけない者であるときは、通訳人を立ち会わせる。」とあり、両訴訟法における国語と日本語の両用語の関係は全く説明がない。また文字・活字文化振興法第3条2では「文字・活字文化の振興に当たっては、国語が日本文化の基盤であることに十分配慮されなければならない。」とあり、素朴で無邪気な、だからこそ始末に負えない音声日本語中心主義が垣間見えている。しかし、これは日本国が締結している諸国際人権条約における言語権の考え方とは相容れないものであり、この矛盾はいまなお放置されたままである。例えば、障害者権利条約の署名により2011年に改正された障害者基本法第3条3で「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保される…。」と規定されたが、上述の両訴訟法はこの障害者基本法改正よりも後年に改正されていながら、手話通訳の扱いには特段の変更は加えられず、公正な裁判を受ける権利としての聴覚障害者の司法通訳を受ける権利を正面から規定していない。他方、日本国は言語的少数者の権利に関する重要な国際条約である原住民及び種族民(Indigenous and Tribal Peoples)条約/ILO第169号条約や、すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約等を批准していない。本報告では、このような状況下でアイヌ文化振興法が制定され、そしていま「日本語教育振興法案」や「手話言語法案」が取りざたされていることの問題点、さらには、言語権概念を日本国内法体制に受容するための条件や課題について、報告者自身が抱えている研究上の課題も交えて、現状を報告したい。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2018-6-6 23:55:14 (373 ヒット)

多言語社会研究会第76回東京例会を、下記の通り開催いたします。

みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

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第76回多言語社会研究会(東京例会)
日時:2018年6月23日(土)午後2時〜6時
場所:東京大学東洋文化研究所 3階第1会議室304号室
   http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
資料代:500円


報告者1 中野隆基(東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻文化人類学コース博士課程)

「儀礼的発話としてのベシロ語の『説教』の生成と翻訳: ボリビア東部低地コンセプシオン市における歴史・文字・教育政策の交差する場で」(仮)

 本発表では、ボリビア東部低地に居住する先住民チキタノとその使用言語ベシロ語の歴史的経緯と現状についての報告を通して、独特なリズムやイントネーションの発話を伴う儀礼的なコミュニケーションであるベシロ語の「説教」が、,匹里茲Δ蔑鮖謀経緯で成立し、∈Fいかなる影響を受けながらどのように生成しているのか、そしてこのような事例が人類学の先行研究の視点によってどの程度説明可能なのか、を考えていきたい。
 .船タノとベシロ語の成立を理解するには、当地で17世紀末から18世紀中ごろにかけて行われた、イエズス会による先住民集住化政策と言語統一政策を考慮する必要がある。多様な言語やスタイルで生活を営む諸集団を前に、宣教師は布教を効率化するため、当時最も多くの話者に使用されていた言語である「チキト語」を標準語として整備し、諸集団を集住化させて一元的に「チキト」と名付けた。独特なリズムやイントネーションを伴い、在来の諸集団の首長の演説と類似したスタイルをもつキリスト教の「説教」は先住民に広く受け入れられ、後に典礼や祝祭の組織を担う先住民典礼組織により現地語で実践されていくようになる。
 △靴し、このように説明される「説教」であるが、常に変わらず失われることなく維持・実践されてきた訳では当然ない。例えば、コンセプシオン市の場合では、赴任してきた神父と先住民典礼組織の折り合いがうまくいかず、先住民典礼組織の活動は一度取りやめになってしまったという。その後、新たに赴任してきた神父と地元住民との協働によって先住民典礼組織は再生し、そして「説教」に関しても、今日「脱植民地化」を目指す政府の法整備により学校や一般労働者に対して教えられるようになったベシロ語の教員が協力・実践するなど、様々なアクターの協働によって再生してきたのである。
 K榿表では、文化人類学における知識・翻訳・言語の問題や「儀礼的発話」研究、あるいは言語人類学などの分野を参照しながら、これらの事例をどの程度説明可能なのかを検討していきたい。

キーワード ベシロ語、儀礼的発話、先住民言語政策、キリスト教、文化人類学


報告者2 藤井久美子(宮崎大学)

「東京の中国語景観」

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、東京では外国人観光客受け入れのための多言語対応が進展している。例えば、公共交通機関で使用される言語には英語・中国語・ハングル以外の言葉も見られるようになり、多様化が進んだ。また、表示の数も増えて、質(翻訳・内容)も以前よりは向上している。このような状況のもとで、東京の中国語景観も多数多種多様となってきているが、ここ数年に増加した多くの表示は観光客に向けたものであろう。では、生活者のための中国語景観はどのようになっているのであろうか。
 生活者という観点からは、東京の中国系コミュニティについての研究としてと、山下清海(2007)が挙げられる。山下は、第二次世界大戦後における東京在留中国人の人口変化を明らかにすることを目的として、『東京都統計年鑑』(東京都発行)と『在留外国人統計』(法務省発行)の中の「本籍地別外国人登録者」の統計を用いて、人口の推移を把握し、時期区分を行い、さらには、在留中国人の出身地についてもその推移を明らかにした。他に、陳碧珠(2006)は、東京・横浜地域における華僑・華人のコミュニティや言語生活について概観した。近年の中国での研究としては、吕斌(2017)が、日本社会の言語問題を論じるのに東京の言語景観を分析するという手法を用いている。
 本研究は、最終的には東京における老華僑と新華僑の言語生活の差異を言語景観の分析から明らかにすることを目指すものであるが、今回の発表では、まずは山下(2007)以降の人口動態を明らかにし、特に中国人の住民登録の多い区の代表的な場所(区役所・駅など)の言語景観について分析を試みる。

キーワード 東京 中国人 言語景観 オールドカマー(老華僑) ニューカマー(新華僑)


投稿者: webmaster 投稿日時: 2018-3-1 10:36:59 (1166 ヒット)

第75回多言語社会研究会(東京例会)
(東洋文化研究所班研究「アジアにおける多言語状況と言語政策史の比較研究」との共催)
日時:2018年4月21日(土)午後2時〜6時
場所:東京大学東洋文化研究所三階第一会議室
   http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
資料代:500円

報告者1:中島武史(大阪府立中央聴覚支援学校教諭)
題目:ろう学校の存在意義‐ろう児にとって、日本社会にとって‐
要旨:本発表では、ろう学校(聴覚特別支援学校)の存在意義について、,蹐児にとって、日本社会にとって、という2点から考えてみたい。ろう学校は、教育制度上の枠組みでは「聴覚の面で特別な支援が必要な学校」、つまり「聴覚障害児のための学校」というかつての障害児教育の系譜に位置する学校として一般的には知られている。近年では、インクルーシブ(包含)教育理念によって、聴覚障害児が聴覚特別支援学校ではなく地域学校園への入学または転出をする傾向が強まり、聴覚特別支援学校の在籍数は減少傾向にある。また、多種の特別支援学校と統廃合される兆候がある。しかし、聴覚特別支援学校を手話という日本語とは異なる言語を中核に運営される学校という捉え方をした場合には、ろう学校という場は、種々の課題はあるものの、ろう児にとって必須の教育機関である( 砲世韻任覆、ろう学校とそこで学ぶろう児の存在が日本社会内部の多言語性を地域の学校園に通う聴児とその保護者、地域の学校園の教育関係者らに認識させる社会的機能を発揮する可能性(◆砲あると考えられる。発表時には、主に△療世鮹羶瓦肪者の経験からまとめたい。


報告者2:田中孝史(東京外国語大学)
題目:マリ語(ウラル系)に将来はあるか?
要旨:ロシア固有のウラル系民族であるマリ人の言語、マリ語について、主に以下の3つに関して報告を行う。1)マリ語使用の現状について。マリ語そのものの紹介も含め、現在の言語使用の実態を、報告者が初めてマリを訪れた1992年からの25年間の変遷や、言語景観の紹介も交えて報告する。2)マリ語の維持に関する展望について。連邦政府による知事の任命や土地の文化と無関係な記念碑などの建設といった昨今のロシア連邦の政治的動向や、「合理化」の名を借りた民族語教育の中止、縮小などに触れつつ、今後のマリ語の維持について考察する。3)マリ語の「主要な」方言の一つである、北西方言の復興について、過去10年程度の現地の活動家が行ったことについて、マリ語が公的な地位を持つマリエル共和国外で話されている方言の復興に関わる困難について報告する。

キーワード:マリ語、ウラル系、言語の復興、言語の維持、言語景観


投稿者: webmaster 投稿日時: 2017-10-6 2:51:34 (657 ヒット)

多言語社会研究会第73回東京例会を、下記の通り開催いたします。
みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

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第73回多言語社会研究会(東京例会)
日時:2017年10月21日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト4Fセミナールーム
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告1
【報告者】跳弟(立教大学 社会学部 教育研究コーディネーター)
【タイトル】ネットにおける災害時外国人犯罪の流言に関する研究──熊本地震発生時のTwitterの言説を事例として──

【要旨】先行研究において、大規模な自然災害の発生時には、日本人と外国人の垣根を超えた共助が一部で見受けられる一方で、外国人による犯罪といった流言の拡散という現象がみられることが指摘されている。だがこれらの指摘の多くは、オフライン(ネット以外)の現象に限られている。そこで本研究は、2016年の熊本地震発生時におけるTwitter上でのやりとりを主な分析対象として、オンライン(ネット上)における災害時の外国人犯罪の流言について把握することを試みる。ネット上のデータはデジタルという性質上、入手が容易な面がある一方で、その量の膨大さによる分析上の困難があったが、昨今は分析手法が確立されつつあり、本研究では、そのなかの一つである計量テキスト分析という手法を用いている。


報告2
【報告者】ましこ・ひでのり(中京大学 国際教養学部)
【タイトル】「ヘイトスピーチ=暴力をあおる差別的言動」という概念の再検討──沖縄での「土人/シナ人」「日本語分かりますか」発言の含意から

【要旨】ヘイトスピーチは、ヘイトクライムを誘発する危険性など、憎悪/嫌悪と暴力の拡大再生産の意図などが問題視されてきたが、発信者に被害者への憎悪や意図が確認できない事例はすくなくない。在沖米軍基地新設反対派住民への暴言とそのとりあげられたかたを解析することで、従来のヘイトスピーチ周辺の議論・前提が不充分であることをあきらかにする。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2017-5-28 9:22:34 (801 ヒット)

多言語社会研究会第72回東京例会を、下記の通り開催いたします。
みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

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第72回多言語社会研究会(東京例会)
日時:2017年6月24日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト4Fセミナールーム
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告者1 半嶺まどか ハンニャーヌマドカ(ラップランド大学教育学部博士課程在籍)

「ラップランドでのサーミ諸語、琉球孤での琉球諸語における言語復興と言語教育」

 サーミ諸語と琉球諸語は、世界の異なる地域でそれぞれ話されている少数言語である。サーミ諸語は、現在9から10の異なる言語がノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアで話されている。琉球諸語は、現在5から6の異なる言語が沖縄県と鹿児島県にまたがる琉球孤で話されている。どちらの場合も、それらすべてが危機言語となっている。
 今回の発表では、これらの言語が話されている2地域でのフィールド調査から得られたデータを基に、2地域の比較を行う。サーミ諸語に関しては、フィンランドの北部のイナリ村とウツヨキ村、琉球諸語に関しては、私の地元でもある沖縄県石垣市字宮良村でそれぞれ5ヶ月ほどのフィールド調査を行った。対象は、イナリ、ウツヨキでは幼稚園、小学校、中学校、専門学校でサーミ語を教える教員10名。そして、石垣市宮良では、地元の小学校で八重山語宮良方言を教えている教員2名である。石垣市宮良での調査は、これからも続けるため、対象とする者の人数が増えることが予想される。まず、言語の話せれている地域の歴史的背景、言語政策、言語態度、言語復興の状況について述べ、さらにフィールド調査で得られたインタビューを紹介し、少数言語の話者と言語教師のアイデンティティ構築が多様で複雑であること、それからより話者の少ない言語においては、特に言語教育に携わる教員の負担が多いこと、さらにより小さなコミュニティにおいて、言語教育の経験を分析する。

キーワード 言語復興 サーミ諸語 琉球諸語 教員アイデンティティ 少数言語教育


報告者2 石部尚登(日本大学)

「1866年時点のベルギーにおけるオランダ語、日本におけるオランダ語」

 1866年8月1日(慶應2年6月21日)、日本とベルギーは⽇⽩修好通商航海条約を江戸で締結した。日本にとって9番目の西洋諸国との条約であった。それ以前の条約と同様、両国間の交渉は主としてオランダ語もってなされた。また、条約自体は日・仏・蘭語の3言語で作成されたが、「和蘭譯文を以て原と見るへし」とオランダ語が正文とされた(第22条)。
 こうした最初の日白交流における言語選択は、一方では日本における蘭学の伝統、他方ではオランダ語がベルギーの国語のひとつであるという事実から、ある意味では必然であったとも考えられる。とはいえ、当時の両国の社会言語学的状況に鑑みれば、そうした理解だけでは十分ではない。そこで本発表では、両国の史料を用いてそれぞれの言語状況を検討し、この時代、両国ともに社会言語学的状況(言語制度、言語意識、言語選択)の大きな転換期に置かれていた中でのオランダ語の選択であったことを示したい。
 具体的には、ベルギーでは独立以来のフランス語を事実上の唯一の公用語とする言語制度が続いており、オランダ語の言語運動がようやく政治化しはじめる時期であった。当然、ベルギー政府にとってオランダ語の選択は意図したものではなく、日本との条約は結果としてフラーンデレン問題に影響を与えることになった。かたや日本では、蘭学の伝統はなお強固ではあったが、オランダ語以外の言語の重要性もすでに認識されていた。とりわけ安政五カ国条約以降、「当事国言語への志向」が高まりを見せていた(清水康行『⿊船来航 日本語が動く』)。
 実際に、修好条約締結の2カ月後に調印された附屬約書は、「雙方全權各其國語を以てこれを記せり」(第11条)として、日本語とフランス語で作成された。フランス語がベルギーの「国語」であることが両国の共通した認識であったことが示されている。

キーワード 正文 外交言語 修好通商条約 ベルギー 日白交流


投稿者: webmaster 投稿日時: 2017-4-6 18:28:49 (719 ヒット)

多言語社会研究会第71回東京例会を、下記の通り開催いたします。
みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

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第71回多言語社会研究会(東京例会)
日時:2017年4月22日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト5階セミナー室
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円

報告者1 周楊措(ドゥ ヤンツァオ 広島大学・国際協力研究科)
チベット・アムド地域におけるチベット村の言語使用状況
―青海省黄南蔵族自治州尖扎県カルマタン村のホンツァン(དཔོན་ཚང)のO氏の家庭を事例に―

 青海省黄南蔵族自治州尖扎県(チベット語:གཅན་ཚ་རྫོང་།)カルマタン村(漢語:尕麻唐、チベット語:སྐར་མ་ཐང་།)は、チベット族を主とし漢族が雑居している村であるため、地元ではチベット村と呼ばれている。
 本発表は、カルマタン村の言語使用状況に焦点をあて、「漢族のまま」残っているO氏の家庭を事例とし、世代ごとに漢語青海方言と普通話、チベット語・アムド方言をどのように使い分けているのか。そして、なぜ世代ごとに使用言語が微妙に移り変わるのか、その理由を明らかにするのが目的である。
 O氏の家庭は、1918年に西寧盆地東部から移住し、今日まで98年間チベット族の村で生活している家庭に由来し、日常、上の三言語を話し相手と場所によって使い分けている。第一世代であるO氏の母語は漢語青海方言であり、彼の妻の母語はチベット語アムド方言である。第二世代である長男はチベット族の村出身であることに加え、民族学校に通ったことがあるため、漢語青海方言と普通話、チベット語・アムド方言、三つの言語に堪能である。しかし、長男の嫁は漢族の村の出身なので、漢語青海方言しか話せない。この嫁が家族に加わったことにより、第三世代の母語は漢語青海方言となり、家庭内での言語も漢語青海方言へと変わった。


報告者2 柳田亮吾(大阪大学大学院 工学研究科・国際交流推進センター助教)
イン/ポライトネスと利害・関心

 本発表では、話し手・聞き手が相互行為に持ち込む利害・関心に注目し、2014年東京都議会やじ問題について分析する。イン/ポライトネス現象を分析するにあたって、利害・関心の理論的な整理を行う。
1. 資源としてのイン/ポライトネス
社会において言語(変種)的資源とその獲得の機会は不均衡に分配されている(ブルデュー 1993)。従って、相互行為者が利用可能な対人関係的言語・談話資源は何なのか、そして、その資源をいかに有効活用しているかを分析する必要がある。
2. 手段としてのイン/ポライトネス
2.1 相互行為を通して他者との関係を維持・発展を動機づけているのは、その関係性から得ることのできる資源という見返りである(Lin 2002)。つまり、対人関係的談話実践はこの資源へのアクセスという利害・関心に導かれている、といえる。
2.2 イン/ポライトネスパフォーマンスは、他の相互行為参加者に評価されることで、その人の「品行」を示す(Goffman 1967)。従って、相互行為者は2.1の利益を追求するにあたってそれが示す自身の品行を考慮する必要があり、2.1と2.2の利益のバランスを取ることが肝要となる。
 以上を踏まえ、データ分析では、東京都議会という実践の共同体においてやじを飛ばされた塩田議員と野次を飛ばした鈴木議員はどのような資源を用いたか(1.)、そこで追及されていた利益は何か(2.1、2.2)に加え、その相互行為が塩田のツイートによってより広範な社会にさらされた際、それぞれの議員はどのような評価を受け、どのような利害を被ることになったか(2.2)について考察したい。

<参考文献>
ブルデュー・ピエール(1993)『話すということ―言語的交換のエコノミー』稲賀繁美訳 藤原書店
Goffman, Erving (1967) Interaction Ritual -Essays on Face-to-Face Behavior. New York: Pantheon Books.(浅野敏夫訳 2002 『儀礼としての相互行為−対面行動の社会学〈新訳版〉』法政大学出版局)
Lin, Nan (2002) Social Capital: A Theory of Structure and Action. London, New York: Cambridge University Press.(筒井 淳也ほか訳 2008 『ソーシャル・キャピタル―社会構造と行為の理論』ミネルヴァ書房)


投稿者: webmaster 投稿日時: 2016-12-30 17:38:24 (822 ヒット)

第70回多言語社会研究会(東京例会)のご案内
日 時:2017年1月28日(土)午後2時〜6時
場 所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室
    http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円

報告者1:根本峻瑠(神戸大学大学院人文学研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員DC)
題  目:1910年の多言語教育−−オーストリア=ハンガリー帝国トリエステ国立ギムナジウムを事例に
報告概要:
 多言語・多民族国家であったオーストリア=ハンガリー帝国では、様々な方策を通じてネーション間の均衡を作り出す試みがなされていた。本報告では博士論文(2016年12月提出)を元に、イタリア語とスロヴェニア語の言語境界地域であるトリエステに設置されていた、ドイツ語を主要教授語とする中等教育機関であるトリエステ国立ギムナジウムにおける多言語教育の内実を、リュブリャーナとツェリエの国立ギムナジウム、トリエステ市立ギムナジウムとの比較を通じて明らかにする。

報告者2:赤桐敦(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程)
題  目:プロテスタント宣教師の文字教育から中国人による言語改革への「言文」の変容
報告概要:
 19世紀末に開始された中国人による言語改革は、アヘン戦争(1840-1842)後に中国に上陸したプロテスタント宣教師の活動に遡ることが、John De Francis (1950)、藤井(宮西)久美子(2003)、村田雄二郎他(2005)、蒲豊彦(2009)らの先行研究によって示唆されている。本発表は、まず1850年代の厦門において、宣教師が民衆に対して行った言語教育を考察し、彼らが漢字・漢文ではなく、民衆の俗語を用いることで、近代西洋文明を中国の民衆にもたらそうとしたことを論じる。続いて、1890年代の中国人による言語改革が、その最初期において、宣教師の影響をうけて、民衆の俗語を用いた「言文一致」による近代的教育の実現を目指していたことを確認する。そしてさらに1900年代に対日関係の変化によって、言語改革の主眼が、官話と漢字・漢文による「国語統一」へと移行した過程を考察する。本発表は、J. V. N. Talmage(1819-92)、 C. Douglas(1830-77)、盧戇章(1854-1928)、梁啓超(1873-1929)、王照(1859-1933)、呉汝綸(1840-1903)らの活動を、同時代の一次資料によって検証し、背景に存在した複雑な人間関係や政情と、その言説との関係を明らかにすることを目指す。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2016-11-4 16:33:25 (1733 ヒット)

以下の要領で第9回研究大会を開催します(チラシはこちらから)。

【日 時】2016年12月3日(土)
【会 場】東京大学 東洋文化研究所
【参加費】1000円(どなたでも参加できます)
【主 催】多言語社会研究会/東京大学東洋文化研究所
【予 稿】各発表の予稿は、プログラムのタイトルをクリックすると閲覧できます。表示が崩れる場合、再読み込みしてください。(プリントしたものを希望される方は当日500円にて販売。部数に限りあり)。
【テーマ】ことばとアイデンティティ、そして商品化
【主 旨】
 アイデンティティは、その場その場で行われる多様で可変的なことばの選択として、あるいは選択肢(カテゴリー)それ自体の構築プロセスとして現れることが近年の研究で指摘されている。これは言語的アイデンティティがもはや話者と分ちがたい生まれながらの属性としてではなく、自覚的に「装い」「着脱」可能なものであることを示唆している。また、人の移動のみならず、場所に縛られないネットワーク上のコミュニケーションが飛躍的に増大する中で、地元のことばを「母語」として「自然」に習得する、といった言語と人の宿命的な結びつきは弱まりつつある。
 話者はあることばを選ぶことによって自分を演出し、より高い価値のある「商品」として売り出すことも可能であり、一方で、好ましい選択肢として立ち上がるさまざまなことばもまた、「商品」として売買されるような存在に転化しつつあるとも言える。
 ―商品化しつつあることばと、その選択に伴う話者のアイデンティティのゆらぎについて考える。

【プログラム】
12:00      受付開始
12:30〜12:40 開会あいさつ

<自由テーマの部>
12:40〜13:25 氏家佐江子(SBFコンサルティング)
       「企業における社内英語公用語政策および英語使用の現状とその影響」

〔13:25〜13:30 休憩〕

<大会テーマの部>
13:30〜14:30 基調講演 井上史雄(東京外国語大学 明海大学名誉教授)
       「言語景観の経済と不経済 ーー国際英語と危機言語ーー」

14:30〜15:00 柳田亮吾(大阪大学工学部 国際交流推進センター 助教)
       「イン/ポライトネスとアイデンティティ―利害・関心に注目して―」

〔15:00〜15:10 休憩〕

15:10〜15:40 渡邊則子(京都大学他)
       「日本漢字能力検定と商品化」

15:40〜16:10 歌田英(東京大学人文社会科学研究科修了)
       「商品としての言語:言語観のフレームワーク分析と言語権をめぐる考察」

〔16:10〜16:30 休憩〕

16:30〜18:30 質疑および全体討論
18:30     閉会
 
〔終了後、会場近くにて懇親会〕

【お問い合わせ】
多言語社会研究会(塚原)congres@tagengo-syakai.com
『ことばと社会』事務局(三元社)電話 03-5803-4155


投稿者: webmaster 投稿日時: 2016-10-5 22:21:12 (744 ヒット)

以下の要領で第69回多言語社会研究会(東京例会)を開催します。ふるってご参加ください。

第69回多言語社会研究会(東京例会)のご案内
日時:10月22日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告1 貞包和寛(東京外国語大学大学院博士後期課程)
題目:「エスノレクト」の概念について ―米・ポ・日の言語学者の使用から―
報告概要:
 あらゆる学術分野は、その分野において重要な概念を表示・操作するために、分野独自の術語を用いる。このような術語は、我々が日常的に用いる言葉と比較的一致しているものもあれば、全く別のものも存在する。前者の例としては「方言」、「修飾」などが挙げられるであろうし、後者としては「統語」や「言語コード」などが挙げられよう。
 概して言えば、術語とは概念操作のための道具である。無論、ある術語の使用において、研究者の間でも意見の分かれる場合がたびたび見受けられるが、術語と言えど言語記号であり、恣意性から逃れられない。従って、使用する人間が異なれば、術語の意味する範疇も異なることは、ごく自然なことではある。しかしながら、時にそのような齟齬が、見過ごすことの出来ないほど著しくなる場合がある。
 本発表で注目する「エスノレクト」も、そのような術語のひとつである。「エスノレクト」という術語とそれが示す概念は、言語学では比較的近年になって用いられ始めたもので、本来的には 1980 年代にアメリカの社会言語学界において用いられはじめた ethnolect という術語に由来する。ポーランドでは 1989 年に Alfred Majewicz が、etnolekt という形でこの術語を導入し、以降は主にマイノリティ言語研究において頻繁に使用されるようになった。一方我が国では、2011〜2014年度に行われた科研費助成事業「エスノレクトから見る日本の多言語社会化」(研究代表者:藤井久美子)があるものの、いまだ十分に浸透している術語とは言い難い面がある。
 これら三つの概念、すなわち本来的な ethnolect、ポーランドの etnolekt、そして日本の「エスノレクト」は、字面から一見すると表記上の違いしか存在しない。ところが実際には、この三者の間には大きな概念上の差異が見受けられる。端的に言えば、以下のようにまとめられよう:
1. 社会言語学一般:移民の言語習得に際して観察される母語の影響の総称
2. ポーランド:「言語」か「方言」か、帰属の分かれる言語に対する中立的呼称
3. 日本:所与の社会における多言語性を記述するための概念装置
 本発表では、これらの差異をより詳細に分析する。その上で、これらの差異の背景には研究者のどのような意図があるかを明らかにしたい。
キーワード:エスノレクト、ターミノロジー、移民、ポーランド


報告2 沓掛沙弥香(大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程)
題目:多言語社会タンザニアにおける言語状況に関する一考察―6つの調査地の比較から
報告概要:
 タンザニアは、国内に120以上の民族・言語を抱える多民族・多言語国家である。一方で、アフリカ大陸固有の言語であるスワヒリ語が唯一の国家語とされ、国民のほとんどが肯定的に受容し使用している状況がある。しかし、近年の傾向としては、英語使用を重視する傾向が強まっている。また、120以上あると言われる民族語に関しては、具体的政策は打ち出されておらず、多くの民族語がゆるやかに衰退を続けている。
 報告者はこれまでの研究において、先行研究で都市部のみの問題として語られてきた英語偏重主義的態度が農村部にも見られ始めたことから、全国的な英語志向の高まりを指摘した。一方、2014年ごろから、タンザニアの言語政策においてスワヒリ語使用を推進する動きへの揺り戻しが目立つようになった。これらの背景には、グローバル化に伴う英語の重要性の増加と、世界的な母語教育奨励の動きがあると考えられる。このような世界的潮流の中で、タンザニアの人々はどのような言語使用を行い、どのような言語態度を示しているのだろうか。
 今回の報告では、まず、タンザニアにおける言語状況を歴史的に整理する。その上で、報告者が2015年9月から12月と2016年7月から9月の合計7ヶ月間に行ったタンザニア南部地域の6つの調査地でのフィールド調査から、人々の言語使用と、言語態度について社会的背景を踏まえて考察を行う。さらに、多言語社会タンザニアにおける英語の浸透の可能性と、民族語存続の可能性を考察する。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2016-5-22 6:39:40 (1245 ヒット)

多言語社会研究会例会を下記の通り開催致します。ふるって御参加いただきますようお願いします。


第68回多言語社会研究会(東京例会)のご案内
日時:6月25日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告1 脇阪 紀行(大阪大学未来戦略機構)
題目:薄暗がりの中の「ことばの暴力」
報告概要:
 2000年代初頭から顕在化したヘイトスピーチの運動に対して、社会全体の危機感が高まり、反ヘイトの運動やインターネット・プロバイダーによる規制、さらに2016年5月には、ヘイトスピーチ規制法が制定される。これによって、在日コリアンに象徴されるヘイトスピーチへの抑制効果が期待されるが、果たして、これでヘイトスピーチが根絶するのだろうか。
 日本には多くの懸念すべき状況がある。
 まず、在特会など一部集団によって在日コリアンや韓国・中国への差別・侮蔑を叫ぶデモは今なお続いている。ツィッターの言語分析や質問紙調査から、若者世代にレイシズムの偏見の存在を裏付ける研究もある。仮に差別的表現が今後、減ったとしても、差別をどこかで許容する感覚はなお潜み続けるのではないか。そんな懸念を裏付ける一つは、インターネット空間におけるヘイト表現である。在日コリアンのみならず、女性などへの嫌がらせの書き込みが後を絶たない。2016年3月に反響を呼んだ「保育所落ちた日本死ね」のブログでも、政府の待機児童政策を前進させる世論の後押しを生んだ半面、ブログに多くの女性蔑視、韓国批判の書き込みが見られた。
 これまでの研究から、インターネットへのヘイト表現を書き込むのは0・5%程度とみられ、「炎上」が起こるきっかけとなる書き込みをするのは、特異な性格をもった、ごく一部の人間だとされる。にもかかわらず、ネット空間で多くのヘイト表現が増殖している。
 フランスの社会学者ドニミク・カルドンは、ネットの普及によって公共空間の拡大と社会や民主主義の変容が起きていると指摘し、公共空間とは切り離された「薄暗がり」にとどまっていた人々の「つぶやき」や「おしゃべり」が、ネットによって、公共空間に広がる将来を楽観している。しかし、「陰口」や「憎悪表現」が公共空間に侵入し。「ことばの暴力」となっている現実を見過ごすことができない。
キーワード:ヘイトスピーチ、インターネット、薄暗がり、公共空間


報告2 山下 仁(大阪大学)
題目:ヘイトスピーチの問題を社会言語学から考える
報告概要:
 前発表に引きつづき、ヘイトスピーチの問題を取り上げる。本発表では、まず日本の社会言語学の分野ではあまりヘイトスピーチのような現象が取り上げられなかったことを確認する。これまでの社会言語学やポライトネス、あるいは語用論の研究者は、より良い人間関係を構築するためにコミュニケーションがなされる、ということを前提にして研究を行ってきた。それゆえ、ヘイトスピーチや陰口、あるいはヤジのような、よりよい人間関係を構築するのとは逆方向のコミュニケーションの問題は取り上げてこなかったのであろう。ところが、社会的なコミュニケーション上の問題は、よりよいコミュニケーションを研究しても解決することはなく、むしろ、コミュニケーションがうまくいっていない状況を研究するべきなのかもしれない。
 この点、研究というものが、「よりよい社会に貢献するべきものである」という暗黙の前提にたっていながら、結局そのような貢献からは遠ざかっているようにも思え、いくつかの考えるヒントを与えているようにも思う。
 他方、ドイツにはヘイトスピーチに関する研究書が多くある。そこで、まず、言語学の観点からヘイトスピーチを捉えたマイバウアーの議論を紹介する。ところが、音声学、形態論、意味論、語用論、ポライトネス、対照言語学といった観点からヘイトスピーチをとらえたとしても、あまり有意義とは思えないので、他のいくつかのドイツ語で書かれた論文を参考にしながら、問題の所在を考えてみたい。最後に、「ことばの暴力」としてのヘイトスピーチについて考えるため、「構造的な暴力」について語ったバベロフスキーの議論を取り上げる。
キーワード:ヘイトスピーチ、構造的な暴力、社会言語学


報告3:川島 隆(京都大学)
題目:「フクシマ」をめぐるドイツの新聞報道
報告概要:
 2011年3月の東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故は、ドイツでも大きく報じられた。その際、ドイツのマスメディアは地震・津波の被害を十分に報じず、その一方で原発事故に対して「ヒステリー」的な反応を示して読者や視聴者の不安と「パニック」を煽ったという見方がある(熊谷2011; Zöllner 2011; Coulmas & Stalpers 2011; Felix 2012; 川口マーン2013)。たしかに、ドイツにおける報道が他国と比べて原発事故に比重を置いていたことは、その後の研究で実証されている(林2013; Kepplinger & Lemke 2014)。しかし、その傾向はメルケル政権の原発稼働延長政策が議論を呼んでいたドイツの政治状況を反映したものであり、ことメディア報道のあり方がその後の脱原発の世論に決定的な影響を与えたという事実もない(Weiß, Markutzyk & Schwotzer 2014)。日本の原発事故をめぐるドイツの報道がセンセーショナルで感情的な「偏向報道」であったとの見解は、それ自体が感情的な臆断にすぎないのである。
 以上の前提に立ち、本発表では、「ヒステリー」および「パニック」という言葉が日本の震災と原発事故をめぐる文脈でどのように用いられたかを、ドイツの有力な全国紙を例に検証する。取り上げるのは、原発に批判的な中道左派の『南ドイツ新聞』、原発推進の立場をとる右派の『ヴェルト』、および原発推進から脱原発へと主張を変化させたリベラル保守の『フランクフルター・アルゲマイネ』の三紙である。新聞記事および読者投稿の分析を通じ、ドイツ人は放射能のリスクに対して過剰に反応する(「ジャーマン・アングスト」)という、原発推進派が反原発・脱原発派を揶揄するにあたり動員される言説の枠組みに上記の言葉の使われ方が合致することを示す。ひいては、こうした言説が、異なる立場の人々のあいだの対話を阻害するコミュニケーション断絶の手段となっている事態について考えてみたい。
キーワード:原発事故、新聞、「偏向報道」、ジャーマン・アングスト、言説分析


投稿者: webmaster 投稿日時: 2016-2-3 19:48:04 (937 ヒット)

第67回多言語社会 研究会(東京例会)のご案内
日時:4月23日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト5階セミナー室
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円

報告者1:岡村健介(獨協大学大学院外国語学研究科ドイツ語学専攻研究生)
題目:「『想像の共同体』を用いた言語復興プロセスの理論化の試み――ドイツ・ソルブ学校における言語実践と共同体イメージ」
報告要旨:
 UNESCOによれば、現存する6,000言語のうち約2,500言語が消滅の危機に瀕している。こうした状況の中、世界各地で言語復興活動が行われているが、言語復興はどのようなプロセスをたどり、どうすれば成功といえるのだろうか。本報告は、この疑問を出発点とし、言語復興プロセスを理論化することを目的とする。
 まずは、言語復興プロセスの理論化に「想像の共同体」をどう応用することができるかを議論したい。ナショナリズムをめぐる議論の中でAndersonによって提唱された「想像の共同体」は、現在さまざまな分野に応用されている。その中でも第二言語学習への応用に関する議論をもとに、少数言語話者の言語選択や言語学習を左右する要因について考察し、言語復興がどのように進行し、そのために何が必要なのかを検討する。
 続いて、以上の議論に基づいて行った調査について報告する。報告者は、ドイツ東部の少数言語であるソルブ語が教えられている高等学校を訪れ、アンケート・インタビュー調査を行った。その結果から、ソルブ語話者であるソルブ学校教員や生徒、保護者の言語選択やソルブ語使用の実態、また彼らの持つソルブ語話者コミュニティーに対するイメージについて考察する。
キーワード:想像の共同体、言語復興、少数言語、ソルブ語

報告者2:二神麗子(群馬大学大学院教育学研究科 障害児教育専攻)
題目:手話言語条例にみる聾者の参画に関する一考察−他法案との比較検討から−
報告要旨:
 近年、「手話が言語である」ことを定め、手話の理解・普及を推進することを目的とする条例(手話言語条例)の制定が全国の地方自治体で広まりつつあり、平成28年1月現在、3県30市町村で制定され、今後も増加する見通しである。
 本報告では、(神28年4月1日施行の障害者差別解消法と手話言語条例の適用範囲について比較した上で、なぜ手話だけに特化した法律および条例が必要なのかについての、法制化の根拠について検討する。そして、⊂霾鵑悗離▲セスやコミュニケーションを保証する、いわゆる「情報コミュニケーション条例」と手話言語条例が両立する可能性を探るために、「手話言語・障害者コミュニケーション条例」を制定した明石市の条例を事例として取り上げる。その上で、6砲瓩萄て颪箸い錣譴覽聴発議による政策条例であり、当事者たる聾者団体が条文作成に深く関与しえた、群馬県と前橋市の事例を取り上げ、両条例の上程プロセスにおいて聾者がどのように関与し、その思いが条例に反映し得たのかを検討する。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2015-12-31 11:21:03 (1691 ヒット)

多言語社会研究会例会を下記の通り開催いたします。ふるってご参加ください。

第66回多言語社会 研究会(東京例会)のご案内
日時:1月30日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告者1:ボルジギン・ムンクバト(千葉大学 特別研究員)
題目:「報告概言語とアイデンティティ−内モンゴルの牧畜地域における言語・文字使用の実態から−」
報告要旨:
内モンゴル自治区(以下内モンゴル)におけるモンゴル民族に対する教育の実状について、牧畜地域を中心に.皀鵐乾詭餌桶惺察↓▲皀鵐乾觚豢軌蕕鉢モンゴル語・文字の使用実態について実施した調査結果を分析する。モンゴル人学生の言語使用状況に関してアンケート調査を実施し現状を明らかにする。モンゴル語そのものの学習や教育について、都市部と牧畜地域の実態を比較しながら、モンゴル人が学ぶ「モンゴル語」とは何であるかを考察する。同時に、牧畜地域から町に移動させられた子どもたちの言語使用状況に関して、学生たちの日常生活における言語使用状況を「学校」、「家庭」、「友人間」、「買い物」と4つの場面におけるモンゴル語と漢語の使用状況を見る。さらに、文化生活においてメディアなどに接するときの言語選択について分析を行う。モンゴル語・文字使用やその伝承に強い信念と愛着を持つ少数の篤志家の地道な努力によって言語文化が守られている事例をあげ、関連法律条例の実態について考察する。
キーワード:内モンゴル、民族教育、モンゴル語と文字使用、アイデンティティ

報告者2:寺尾智史(宮崎大学教育文化学部 准教授)
題目:「初等義務教育での英語学習強制化と国語教育における漢字強要時間の必然的減少との相関についての考察」
報告要旨:
2011年度より、小学校において新学習指導要領が全面実施され、5・6年生で年間35単位時間の「外国語活動」、実質は英語の押しつけ(教育現場では一般的に「英語活動」と呼称)が必修化された。さらに、2020年完全実施のタイムスケジュールで、小3から英語活動は必修化、小5・6は成績がつく教科へと強化、移行が行われている。こうした中、隠れた「外国語活動」の側面を持つ「漢字教育」=「漢字活動」の質的・量的ダウンサイジングは必然と思われるが、この相関についての議論は抜け落ちてしまっている。ハラスメントや体罰とも言い得るドリル的な手法による漢字の習得が義務教育において強要され、強い嫌悪感を抱く多くの小学生、さらには全教科を教えることが前提の小学校教諭にとって、もし英語教育が今まで通りの漢字教育と同時並行して行われるようなことになれば、深刻な学習的、心理的負担および不安を惹起しかねない。これらの問題点を、英語教育、標準語教育に内包される形での漢字教育双方に強い疑念を持っている立場から論じる。


投稿者: webmaster 投稿日時: 2015-8-27 16:27:59 (967 ヒット)

多言語社会研究会例会を下記の通り開催致します。
ふるって御参加いただきますようお願いします。


第65回多言語社会 研究会(東京例会)のご案内
日時:10月24日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告者1:朴貞蘭(パク・ジョンラン、大分県立芸術文化短期大学専任 講師)
題目:「朝鮮戦争期における戦時教材研究―初等学校の『戦時生活』シリーズを中心に―」
報告概要:
韓国における『戦時教材』の諸問題は、すでに2006年以降、ソウル大学 校国語教育研究所編著『国語教育100年史』機Ν供2006)や『未来を開く 国語教育史』機Ν供2007)などの国語教育研究所叢書シリーズにおいて指摘さ れているが、これらの韓国国内における教材研究は、常に朝鮮半島の歴史事情・状況を特殊項の範囲でしか論じていない、すなわち、同タイプ の戦時教材であっても、日本帝国時代の朝鮮総督府が製作したものは「植民教育政策」として批判し、朝鮮戦争時に作成された『戦時教材』 は、民族と国家のために「やむを得ない教育政策」であったという論理構図がみられる。しかし、これは、単なる教材における連続性のみなら ず、「被教育者としての民衆を抑圧し教育する側=権力者のヘゲモニーを隠蔽」する韓国における教育のメカニズムの問題として再検討される べきである。本発表では、戦時教材のなかでも韓国の教育界においてほとんど紹介されてこなかった『飛行機』、『軍艦』、『我々は必ず勝 つ』、『たくましい我が民族』、『我々も戦う』など、初等学校用の戦時教材を取り上げ、朝鮮戦争期における戦時教材の実態を考察してみた い。
キーワード:朝鮮戦争、戦時教材、「反共主義」、「分断イデオロギー」


報告者2:窪田暁(奈 良県立大学地域創造学部専任講師)
題目:「ふたつの移民言語: 象徴と資産―ドミニカ共和国の日本人移住者、国内の日系ドミニカ人の事例から―」
報告概要:
1956年〜1959年のあいだに1,300人の日本人がドミニカ共和国(以下、ドミニカ)へと移住した。現在、ドミニカには約800人の日本人とその子孫が暮らしており、100人あまりの日系人とその配偶者・子どもが日本にきている。本発表では、まず、現在もドミニカに暮らす日本人移住者1世の言語使用の実態を2世への継承とその意識に注目して明らかにする。ブラジルなどにくらべ日本人の絶対数が少なかったドミニカでは、2世とドミニカ人との通婚が要因で、日本語の使用頻度は急速に減少している。そうした環境のもとで高齢化する日本人移 住者が日本語をどのように使用しているのかを継承、意識といった面から明らかにしたい。
つぎに、日本に働きにやってきた彼らの子どもにあたる日系ドミニカ人2世・3世の言語使用の実態を、おなじく継承とその意識に注目して明らかにする。神奈川県の日系ドミニカ移民コミュニティで 調査をつづけるうちに、日系ドミニカ人が少数集団として生活するなかで、エスニック・グループや日本社会という枠組みから自由であろうと している様子が浮かびあがってきた。例えば、ドミニカ人はエスニック・グループとしての規模は小さいものの、スペイン語話者としてみれ ば、共通の母語をもつペルー人が近くに暮らしており、スペイン語は彼らとのコミュニケーションのためにも欠かせないものとなっている。ま た、地球全体で多くのスペイン語話者がいることを念頭におき、言語資産としての有用性を彼ら自身が認識していることがわかった。
本発表では、上記ふたつの事例をもとに、移民言語を継承の面から考察するなかで浮かびあがる象徴性と資産性に注目 し、とくに少数集団としての特徴について議論をすすめていきたい。
キーワード:ドミニカ共和国、日本人移民、言語継承、資源、象徴


投稿者: webmaster 投稿日時: 2015-5-30 15:19:28 (976 ヒット)

多言語社会研究会例会を下記の通り開催致します。
ふるって御参加いただきますようお願いします。


第64回多言語社会研究会(東京例会)のご案内
日時:6月27日(土)午後2時〜6時
場所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室
   http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告1 西島佑(上智大学大学院博士後期課程)
題目:国家語の概念小史――「国語」へのオルタナティブとして
報告概要:
 日本語には、国家の言語を指し示す用語として、「国語」と「国家語」という2つの言葉がある。この内「国語」は、とりわけ90年代以降国民国家やナショナリズムとの関連で急速に理解が深まった。しかし、「国家語」の背景については、それほどよく知られているわけではない。
 国家語(Staatssprache)は、19世紀のドイツ語圏、とくに多言語主義を採っていたオーストリア=ハンガリーを中心に出てきた概念であり、多言語状態を前提としている側面がある。このStaatsspracheは、戦前に保科孝一を通して国家語と翻訳され、戦後田中克彦によって再発見されるという経緯がある。こうした過程は、「ひとつの国家に、ひとつの言語」の実現が謳われた「国語」の思想史とは異なる、多言語状態を前提としたもう1つの言語思想史があったことを意味している。
 本報告では、こうした多言語状態を背景として展開されてきた国家語の概念史を、オーストリア=ハンガリーのチェコ語問題の中から出てきた「シャールシュミット提案」、そして戦前の「保科孝一」、戦後の「田中克彦」のテクストを中心に読み解いていくことで明らかにしたい。
キーワード:国家語、国語、多言語主義、概念史、思想史


報告2:荻原まき(立教大学大学院博士後期課程)
題目:台湾原住民族の日本語の語り:記号論的視点からの「今ここ/過去」
報告概要:
 本研究では、台湾原住民族の日本語の談話(ミクロ)と、彼らが置かれていた時代背景(マクロ)から、彼らが日本語で「何を語るのか」、また「どのように語るのか」という点を記号論的視点から明らかにすることを目的とする。特に、その社会が大きく変貌した1945年の日本降伏前後という共時的な時間の視点でのナラティブ分析を試みる。戦後70年も経った現在でも統治されていた国の母語である日本語で、どうして「今ここ」、そして「過去」を語ることができるのだろうか。彼らにとっての「日本語の世界」というものは、一体どのようなものなのだろうか。
 先行研究では、そのほとんどが原住民族が話す日本語を文法的・使用状況的に分析したもの、日本語が変容していることを調査したものである。使用されている日本語そのものに焦点化し、その語り(ナラティブ)を通して何をしようとしているのか、すなわち「言語実践」に注目した研究はほとんど見られない。また「どのように語るか」という点を考えた際、非言語行為も重要な要素となることから、ジェスチャー等の非言語行為も一緒に分析することが必要だと考える。以上のことから、ミクロな視点である言語と、マクロな視点である社会背景の両方向から分析ができる記号論的視点で談話分析を行なった。
 その結果、ある原住民族Aの語りにおいて、日本の降伏を境界に人生が大きく変化し、当時の悔しい気持ちが「今ここ」においても連続していることがわかった。また非言語行為は、ダイクシスの指示内容を補完し、語りの中で、「今ここ」の語りと「過去」の出来事を効果的に結びつけていることも考察された。つまり、「今ここ」において「過去」を語る際、「過去」が「今ここ」においてもはや「過去」ではなくなっているといえるのではないだろうか。或いは、「過去」が連続体として「今ここ」に繋がった時、「過去」が「今ここ」と重なるという現象となるのではないかと思われた。
キーワード:台湾原住民族、語り(ナラティブ)、記憶、記号論、日本降伏


投稿者: webmaster 投稿日時: 2015-2-26 17:42:30 (975 ヒット)

多言語社会研究会例会を下記の通り開催致します。
ふるって御参加いただきますようお願いします。

第63回多言語社会研究会(東京例会)のご案内
(共催:東文研班研究「アジアにおける多言語状況と言語政策史の比較研究」)
日時:4月25日(土)午後2時〜6時
場所:東京大学東洋文化研究所  3階大会議室
   地下鉄 本郷三丁目駅から徒歩6分
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
  *会場が前回とは異なりますので、お気をつけ下さい。
資料代:500円

報告1 吉田達彦(ドイツ語学博士)
題目:質的研究としての会話研究 ―その原理・方法・応用
報告概要:
 会話研究には種々の展開方向性があり,各々の方向ごとに独自の発展経緯が見られる。私は,ドイツのDEPPERMANNの言う「エスノグラフィを指向した会話研究」(ethnographische Gesprächsforschung)を主題としたい。
 この理論の特徴は,人々の日常生活における社会的現実性の構築様態を探るため,事象を,体系的に基準化された会話分析法によって客観化した上で,参入観察としての人間の解釈によって記述し,統合的理解を図ろうとする点にある。この学術指向性は,原理的に社会学者GARFINKELによるエスノメソドロジー(EM)の考え方とも軸を一にする。EMとは,「質的研究」の体系における一つの方法論である。そこでは,ある(言語)コミュニティーにおける社会性の構築様態を解明するため,そのメンバー(ethnos)の日常的行為構築の方法性(method)の記述的解明が主題となる。
 私は,こうした理論的枠組みを伴う「質的研究としての会話研究」を,(1)原理,(2)方法(GAT2トランスクリプト法),および(3)応用(会話分析的ポライトネス研究)の各水準において概説し,この観点からの社会言語学的問題性に対する一つの接近可能性を紹介したい。
キーワード:(エスノグラフィーを指向した)会話研究、エスノメソドロジー、質的研究、会話分析的トランスクリプト法(GAT2: Gesprächsanalytisches Transkriptionssystem Version2)、会話分析的ポライトネス研究


報告2:劉鮮花(一橋大学大学院言語社会研究科大学院生)
題目:漢字統一会について――東アジアにおける漢字擁護の位相
報告概要:
 20世紀初頭前後の東アジアでは、近代化の波をうけて、漢字をどのように扱っていくのか、という問題が言論の場において大きな位置をしめるようになっていた。脱漢字のあり方は各「国語」の文脈において異なってくるのであるが、脱漢字への反論は、各「国語」の文脈をこえて、東アジア的に共有されることもあった。本報告でとりあげる漢字統一会はそのひとつの事例である。
 本報告では、日中両国の文字言語改革の歴史をふまえ、関係者である伊沢修二、張之洞と章太炎の視点から漢字統一会を多角的に論じ、「漢字統一」の動きの実体を明らかにしたい。従来は伊沢の視点が重視されてきたが、漢字統一会発足時の中国側の関与をより明確にし、さまざまな反応を示していたことを指摘する。そして、朝鮮側は距離をおこうとしていたこともあわせて指摘する。

キーワード:
漢字擁護 漢字統一会 伊沢修二 張之洞 章太炎


投稿者: webmaster 投稿日時: 2014-12-28 10:45:39 (1148 ヒット)

第62回多言語社会研究会(東京例会)のご案内
日 時:1月31日(土)午後2時〜6時
場 所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室 http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
資料代:500円


報告1: なかのまき(国学院大学特別研究員)
題 目:漢字不可欠論と漢字廃止論の現在
概 要:
 「漢字を排してかなのみで日本語文を書くべきである」というかな専用論、「ローマ字で日本語文を書くべきである」というローマ字論といった漢字廃止論をとなえる人々の活動は現在もおこなわれており、これまでおおくの文献が蓄積されている。それに対して「日本語文は漢字かなまじり文でなければ書けない」「漢字かなまじり文のほうがかな専用文・ローマ字文よりすぐれている」といった漢字不可欠論が存在する。両者がどのような根拠をあげて論を展開していったのか、そして現在なぜ漢字不可欠論が主流となっているのかについて考察する。

キーワード【漢字不可欠論、漢字廃止論、かなもじ論、ローマ字論、国字論】


報告2:ましこ・ひでのり(中京大学)
題 目:言語論の知識社会学序説:広義の社会言語学の再確認
概 要:
 本報告の目的は、広義の社会言語学の領域として、いわゆる言語論(広義のメタ言語)を社会学的に記述・解析する方向性を再確認(方法論的議論)することである。
 報告者は先日、『社会言語学』誌上で《「戦後日本の社会言語学」小史》という副題をもつサーベイ論文を発表した。一方、過去には「近年の俗流言語論点描」という批判的レビューを連載している。これらをかきつらねてきたことをふりかえり到達したのは、つぎの点だ。

(1)社会言語学は言語現象の広義の政治性(科学性/イデオロギー性etc.)も対象化する以上、メタ言語(言語研究/言語論)自体の対象化がふくまれる。
(2)そこには、社会言語学的記述や言語学テキストの政治性の検討はもちろん、国語教科書・新書など一般むけ刊行物の同様な解析もふくまれる。
(3)広義の社会言語学が広義の言語論を対象化する構図は、知識社会学が「社会学の社会学」という自己言及的な視座にたどりついたのと同形である。

 本報告では、以上の様な整理をふまえ、既存の言語研究・言語論の政治性をいくつか検討したうえで、今後の展望を提示したい。

【キーワード】言語論,知識社会学,政治性


投稿者: webmaster 投稿日時: 2014-11-10 10:38:52 (3774 ヒット)

以下の要領で第8回研究大会を開催します。

【チラシダウンロード:PDFファイル2.7MB】

【予稿集ダウンロード:PDFファイル15MB】

【日 程】2014年12月6日(土)・7日(日)
【場 所】名古屋市立大学 滝子キャンパス1号館
     アクセスマップ
     キャンパスマップ
【参加費】1000円(どなたでも参加できます)
【テーマ】アジアのリンガフランカ
【趣 旨】
 リンガフランカということばにはさまざまな意味をもりこむことができる。この場でひとつの定義を与えることはしないが、アジア地域というこれまた漠然とした地理的範囲のなかで多くの言語変種がリンガフランカとしての役割を担ってきた。その発生の要因も、帝国的統治、植民地支配、宗教の拡がり、人の移動などが複合的にからみあったものであり、アジアという地域が経験してきた歴史ときりはなして論じることはできない。そしてまた、リンガフランカの機能も、形態も千差万別である。ことばが、境界をこえてひろがり、転変し、あるいは抗争していくダイナミズムや重層性に思いをいたすことができればと思う。

【プログラム】

<1日目>    大会テーマ講演および討論
13:00     受付開始
13:25     開会あいさつ 

13:30〜14:20 講演1:森山幹弘(南山大学) 「多言語社会インドネシア――植民地時代から現在への道のり」
14:20〜15:10 講演2:吉川雅之(東京大学) 「リンガフランカとしての官話の諸相」
15:10〜15:20 休憩
15:20〜16:10 講演3:桜井隆(元・明海大学)「近代日本にとっての国際共通語―ピジンと日本語」     
16:10〜18:00 質疑応答と討論
18:30〜    懇親会

<2日目>    個別研究報告およびミニシンポ
10:00〜10:45 CHANDRASEKERA DISSANAYAKE HERATH MUDIYANSELAGE PREMARATNA
        (スリランカ・ケラニア大学言語学科上級教師)
       「アジアの多言語国家であるスリランカの言語政策とリンガフランカの問題」

10:45〜11:30 大澤麻里子(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部国際交流センター)
       「ドロミテ・ラディン語話者地域(イタリア)における複言語教育と少数言語教育」

11:30〜12:15 佐野彩(一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程)
       「フランスのリヨネ地方におけるフランコプロヴァンス語の言語運動と言語意識」

12:15〜13:30 昼食

        ミニシンポ「越境する少数言語の射程 -現代スペインにおける国家語と少数言語の対外普及政策-」
13:30〜13:40 総論  :萩尾生(名古屋工業大学)
13:40〜13:55 各論1 :長谷川信弥(大阪大学)カスティーリャ語(スペイン語)の事例
13:55〜14:10 各論2 :塚原信行(京都大学) カタルーニャ語の事例
14:10〜14:25 各論3 :萩尾生        バスク語の事例
14:25〜14:40 各論4 :柿原武史(南山大学) ガリシア語の事例
14:40〜15:30 総括討議:司会 佐野直子(名古屋市立大学)

15:30     閉会


投稿者: webmaster 投稿日時: 2014-5-21 8:26:06 (1021 ヒット)

第61回多言語社会研究会(東京例会)のご案内

日時:6月28日(土)午後2時〜6時

場所:東京外国語大学本郷サテライト4階セミナー室
http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html


報告1 平畑奈美(滋賀大学)
題目:対外日本語普及における「母語話者性」の功罪
概要:
 世界の日本語学習者数は、2012年時点で136ヵ国・地域の約400万人である。そのうちの約80%が東/東南アジアに、約15%が北米・大洋州・西欧に存在する。日本語学習者の数は、世界の中で決して少なくない。しかし偏在する傾向が強い。これは、日本語が、経済大国と呼びうる国の言語であること、ではあっても汎用性が低いという特徴によるものであろう。前者の特徴が薄れつつある今日、日本はこれまでになく、積極的に対外日本語普及を行う(もう少し正直に言うならば、海外の人に日本語を学んでもらう)必要性に迫られている。対外日本語普及の重要な鍵の一つが、「母語話者日本語教師」であり、日本国政府もかねてより、公的に母語話者教師を海外に派遣していく努力をしている。
 ただ、どのような母語話者教師が必要とされるのかについては、わかっていないことが多い。そこで平畑(2014)は、世界5地域、41か国の代表的な日本語教師に、望ましい母語話者日本語教師の資質について尋ねた。もちろんその答えは様々ではあったが、その一方で、「北米・大洋州・西欧」と、「東/東南アジア、その他の国々」の二者で、望まれる資質に大きな違いがあったということが確認された。前者では、現地語能力、在住権、現地での学歴など、教師の資質以前のものへの要求が強い。後者では、母語話者教師の威信も必要性も比較的高く、そのような条件がつけられることが少ない一方で、「人間性」というものの保持への期待が繰り返し語られる。だが、ここで言う「人間性」とは、具体的には一体どのようなものなのか。
 今回は、この調査の結果について報告し、自国外で自身の母語を教える母語話者教師たち、そしてそこで、その土地のマジョリティであり、その土地の母語を操る者でありながら、「非」という言葉をつけて表現される非母語話者教師たちの間で立ち上る「母語話者性」の意味するものと、その功罪について、会場と共に考察を深めたい。


報告2 岡村圭子(獨協大学)
題目:ドイツ在住の日系児童における言語使用状況と帰属意識についての社会学的考察
概要:
 ドイツのデュッセルドルフ市は、欧州の日系企業が拠点を置き、日本国籍を持つひとびとが多く暮らす街として知られている。日系の飲食店が集中するエリアや日本人が多く居住する区域があり、日本語話者を対象としたサービスも多い。本報告の研究対象は、日本語母語話者の親を持ち、ドイツ語を母語として育つ児童である。報告者は、かれらが通うある補習校Aを2006年度から調査してきた。そこで提供される教育プログラムは、いわゆる日本人駐在員の子どもではなく、あくまで現地校・幼稚園に通う子どもを対象としている。さらに、Aの幼稚部(就学前児童のための日本語プログラムを毎週土曜日に実施)の入園者は、ここ数年増加傾向にある。日本語を継承語もしくはひとつの文化的な教養として身に付けさせるために、日本語母語話者の母親が積極的につれてくるケースが多いという。
 本報告では、そこでの参与観察とインタビュー調査から得られた知見をもとに、多言語環境に育つ子どもたちの言語使用の状況と日本語の学習環境について、さらにかれらがどのように日本語/ドイツ語を価値づけているか、かれらの文化的・言語的帰属意識はいかにして形成されていているかについて社会学的な分析を試みたい。


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